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親族内承継をスムーズに行うためのポイント
親族へ事業を承継させるには、適切な後継者を選ぶこと、後継者としたい親族に「会社を継ぎたい」と思わせること、後継者となる人の教育、会社財産を相続させることが重要なポイントとなります。
これらのポイントは、簡単にできるように見えますが、特に現経営者と後継者候補との意思疎通がうまくいかないと事業承継が失敗しかねません。
そこで今回は、親族内承継が失敗しないように、かつスムーズに行うためのポイントをご紹介します。
■親族内承継とは何か
親族内承継とは、事業承継の手法のひとつであり、現経営者が保有する株式や事業用資産を、子・孫・配偶者・兄弟姉妹・甥姪など血縁または姻族関係にある人物へ引き継がせることを指します。中小企業庁の調査によると、事業承継を検討する経営者の多くが最初に検討する手法であり、日本の中小企業において最も一般的な承継形態のひとつです。
■他の承継手法との違い
事業承継の主な手法には、①親族内承継、②親族外承継(役員・従業員への承継)、③第三者承継(M&Aによる株式譲渡・事業譲渡など)の3種類があります。親族内承継は後継者が社内外に広く知られた存在であることが多く、従業員や取引先からの信頼を得やすい反面、後継者候補が社内にいない場合や本人に承継意思がない場合には選択できないという制約があります。
■事業承継税制の活用
親族内承継に特有の重要な制度として「事業承継税制(法人版)」があります。これは、後継者が先代経営者から自社株式を相続または贈与により取得した際に、本来課税される相続税・贈与税の納税を猶予・免除する制度です。2018年度税制改正で創設された「特例措置」では、対象株式の全株・税額の100%が猶予対象となり、要件を満たせば最終的に免除されます。適用には都道府県知事への認定申請など手続きが必要なため、税理士や事業承継の専門家への早期相談が不可欠です。親族内承継を検討する際は、この制度の活用可否を必ず確認しましょう。
事業承継には大きく3つの手法があり、それぞれ後継者の対象や特徴が異なります。以下の表で各手法のメリット・デメリットを比較してみましょう。
| 承継手法 | 後継者 | 主なメリット | 主なデメリット |
|---|---|---|---|
| 親族内承継 | 子・孫・配偶者・甥姪など | 従業員・取引先の理解を得やすい/事業承継税制の適用対象 | 後継者候補がいない場合は選択不可/遺留分をめぐる親族間トラブルのリスク |
| 親族外承継 | 役員・従業員 | 社内の優秀な人材を登用できる/経営の継続性を保ちやすい | 後継者の株式取得資金の確保が課題になることがある |
| 第三者承継(M&A) | 第三者企業・個人 | 後継者不在でも承継可能/経営者が対価を得てリタイアできる | 従業員・取引先への影響に配慮が必要/譲渡先選定に時間がかかる場合がある |
親族内承継は従業員や取引先の理解を得やすく、事業承継税制の活用も見込める一方で、後継者候補の有無や親族間のトラブルリスクへの備えが重要なポイントとなります。自社の状況に照らし合わせながら、最適な承継手法を検討していきましょう。
後継者に適する人を選ぶ
親族内承継を行う場合、後継者に会社を継ぐ意思があるのかがまず重要となります。
子や孫、甥や姪を後継者とする場合、早いうちから会社経営について心の準備をさせておくことが可能です。タイミングについては動画をご覧ください。
しかし、会社の将来性や安定的な経営を続けて行けるのか不安である、リスクの少ない生活をしたいといった価値観から、親族内承継を拒まれてしまうケースも少なくありません。
このため、早いうちから後継者候補となる親族に会社を引き継ぐ意思があるか、現経営者は確認しておく必要があるのです。
次に、後継者となる親族に後継者となる資質があるかをチェックする必要があります。
親族に会社を引き継ぐ意思があっても、経営手腕がなかったり、重要な決断を誤ったりするようでは、引き継がせる意味がないからです。
後継者となる資質があるかをチェックするポイントとして、財務や会計の知識があるか、引き継ぐ会社が行っている事業や業界に精通しているかが挙げられます。
これらのポイントは、後継者教育を行う際に養うことができますが、実際に後継者教育を始める前にそのセンスがあるかを冷静かつ客観的に判断しておきましょう。

「デュー・デリジェンス」で後継者に会社を理解してもらう
「デュー・デリジェンス」とは、会社の価値やリスクなどを明らかにすることをいいます。より具体的には、会社の組織や財務活動の調査を行うことや、財務内容をチェックしてリスクを明らかにする、定款や会社財産についての登記をチェックして法的な問題はないかを明らかにすることなどを意味します。「DD」と略されることもあります。以上に示したチェック項目は、それぞれ会計士や弁護士といった専門家に調査の委託をする、あるいは事業承継のサポートを行う企業に包括的に委託するという方法もあります。
デュー・デリジェンスを行うのは、後継者に引き継がせる会社のリスクを洗いざらい知ってもらい、経営課題を把握してもらうために行います。経営課題が明らかになれば、その解決について後継者は早い段階から検討することができます。デュー・デリジェンスを行う前には、現経営者は可能な限り経営力や事業の将来性の向上に努めておきましょう。親族内承継を行う場合であっても、後継者にとって魅力的な会社でなければ、継いでもらえないからです。
後継者教育で今後の経営リスクを低減させる
デュー・デリジェンスを行い、後継者候補の親族に引き継ぐ意思を確認したら、後継者教育を行いましょう。後継者教育には、大きく分けて社内教育と社外教育の2つの方法があります。まず、社内での教育においては「各部門で必要な経験と知識を習得させる」「実際の経営を行わせる」「現経営者から直接指導を行うことにより経営理念を理解させる」の3つが主要な内容です。後継者に経験を積ませることを通じて教育しながら、後継者に経営者としての素質があるか、苦手なことは何かをよく観察するようにしましょう。
次に、社外での教育においては「他社で働かせることにより人脈や他社での経営手法を学ばせる」「子会社あるいは関連企業の経営を任せることにより責任感や経営者としての資質を身につけさせる」「後継者教育セミナーを受講させることで最新の知識や広い視野を獲得させる」の3つが主要な内容です。
これらの教育は、後継者が既に持っている知識や素養、引き継がせる会社の現状に応じ、その内容や期間を決定します。また、教育をしていくなかで「後継者に向かない」と判断されるケースもありえますが、その場合には別の事業承継の方法も早めに検討するようにしましょう。
適切な財産の分配を行ってトラブルを回避する
親族内承継の場合、社外承継する場合とは異なり、現経営者の所有する財産を親族である後継者に相続させることが可能です。ただし、相続税が多額になる場合もあります。さらに、親族内承継に特有の問題として、後継者以外に相続人となる親族が相続分に関して不満を持ち、結果として紛争に発展してしまうおそれがあります。
後継者に事業用の財産を相続させる場合には、税理士や弁護士といった専門家に相談を行い、後継者の税負担が重くならないための対策を講じておきましょう。また、相続財産のほとんどが事業用資産である場合には、後継者に相続財産が集中することになってしまう場合が多いです。その場合に、後継者以外の相続人には「遺留分」という「民法に基づけばもらえる相続分」を主張する権利があり、この権利を主張されることでトラブルに発展するケースも少なくありません。したがって、事前に親族へ配慮しながら相続の準備をすることが重要となります。

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